日本の埋葬

投稿日: 2020年9月22日 PM 10:12

日本では人が亡くなると当たり前のように行われている火葬ですが、古くは土葬が主流でした。

土葬と火葬

土葬が可能な地域もあるが、現在はほぼ100%が火葬

 土葬とは遺体を棺に入れたまま土の中に埋葬する方法です。現在でも土葬が法律によって禁止されているわけではなく、手続きを踏めば許可してもらえることがあります。

 ただ自治体が条例によって許可していない地域も多く、全体として完全に許容されているわけではありません。

 東京、大阪などの大都市は土葬禁止区域が指定されているなど土葬が可能な地域は限られています。現在の統計では土葬を行っている割合は非常に少なく、ほぼ100%火葬が行われているのが現状です。

欧米では今でも土葬が主流

欧米では土葬が主流

 一方、欧米では現在でも土葬が主流となっています。例えば日本の火葬率が99%なのに対し、米国の火葬率は30%だといわれています。

 親族友人が墓地に集まり、棺を土に掘った穴に埋葬するシーンを映画やニュースなどで観たことがある方も多いのではないでしょうか。

 これは宗教観の違いによるところが大きく、キリスト教では故人が死後に復活することを重視し、またイスラム教では肉体を失うことは禁忌されているなど、遺体を傷つけるのを罪とする価値観があり、生前の状態で埋葬することが大切と考えられているからです。

 その他、土葬に必要な土地の確保が日本に比べて圧倒的に優位であること、土葬は火葬炉などの焼却設備の費用がかからないなどの理由が挙げられます。

日本の火葬の歴史

火葬の始まり

 では、日本ではいつ頃から火葬が行われてきたのでしょうか。

 日本の火葬の歴史は意外と古く、弥生時代に既に火葬が行われていたとされ、「横穴式木芯粘土室」「かまど塚」と呼ばれる古墳に火葬が行われていた痕跡が発見されています。

 日本書紀には法相宗の開祖である道昭が700年に火葬されたと記載されており、これが記録として残っている最初の火葬とされています。

 その後、仏教の開祖と言われる釈迦が火葬されたことが影響し、仏教の広がりとともに火葬が広まり、平安時代になると各地に火葬場ができたりして徐々に火葬が普及してきました。

 それでも明治時代初期までは土葬するのが一般的でした。前述の宗教観と同様に遺体を傷つけるのを罪とする価値観が根強く残り、生前の状態で埋葬することが大切と考えられていたからです。

 また、遺体を焼骨に変えるまでには専門的な技術が求められ、また大量の薪を必要としたことから火葬は土葬に比べ費用がかかる葬儀様式であったためと推察されます。

火葬の普及 

 しかし一方で、火葬によって魂を天へ送るという思想を持った人も多く、また伝染病死体の火葬義務化に加え、人口密集地などに土葬禁止区域を作るなどの政策がとられ、明治時代中期になると火葬の普及率は30%近くに達しました。

 その後、戦後の高度経済成長の都市化と相まって土葬の場所の確保が難しくなるなど地方公共団体が火葬場建設を急速にすすめたことなどから火葬が飛躍的に普及しました。

 現代の日本の葬儀は仏式で行われていることがほとんどですが、日常では宗教にこだわる人は比較的少なく、そのため埋葬方法に強いこだわりがなく、合理的で無難なものとして自然に受け入れられてきました。

こうして日本では 殆どが火葬となったのです。