海洋散骨

投稿日: 2020年10月17日 PM 2:33

前回は四十九日までの法要とお墓の種類、埋葬に関する法律について解説しました。

四十九日を過ぎたタイミングで墓地に埋葬することになりますが、
最近では埋葬せずに自然葬の一つとしての海洋散骨を選ぶ方も多く、
また何年も手元供養として自宅に安置していた遺骨を
海洋散骨する方が増えています。

海洋散骨は違法か

「海洋散骨」は法律に抵触することはないのでしょうか。

結論から言うと、「海洋散骨」は違法には当たりません。

なぜなら現在の日本には、
海洋散骨を明確に禁止する法律自体が存在しないのです。
埋葬方法は個人の宗教観などにも大きくかかわるものであるため、
取り締まりについても一定の余地が設けられているものと思われます。


過去に法務省が非公式ですが、

「散骨は葬送の一つとして節度をもって行われる限り、
死体遺棄には当たらない」

という見解を述べています。
(法律上は遺骨も死体遺棄の対象として扱われます)

また旧厚生省は、

「散骨は希望する者が相当の節度をもって行う場合は処罰の対象としない」

という見解を出しています。

つまり節度をもって行えば違法にはならないということです。

海洋散骨を行う際の節度とは

ではその「節度」とはどのようなものでしょうか。

実際は細かい規定はありません。
つまり散骨を行う際には周りの人々の心境や環境に十分配慮することを
「節度をもって」という表現で表しています。

具体的には以下の通りです。

①2mm以下のパウダー状にする

遺骨を細かく粉末状にし(粉骨)、環境に配慮して海に散骨する。

これは遺骨をそのまま海に撒くと遺骨とわかる状態で海に浮いていたり、
海岸に流れ着き、周辺の方に迷惑をかけたり、
また遺骨遺棄として疑われたりなりかねないので、
遺骨だとわからないくらいに細かくする必要があります。

パウダー状にしたご遺骨は水溶性の紙に
お包みして散骨します
水溶性紙はすぐに溶けて
ご遺骨は海へと還っていきます

②散骨場所の配慮

海水浴場、漁港、漁場の近くでは散骨しない。

散骨場所は陸から遠く離れた(一般的には5海里(9㎞強)程)沖合で行う。

また河川や湖など海以外の場所で行わない。

海には漁船など仕事をしている方がいます。
また沿岸では海水浴客など人で賑わう場所もあれば、
ノリや貝などを養殖している場所もあります。
このような場所で散骨してはいけません。

③環境への配慮

遺骨のみの散骨で、海に溶けない副葬品は流さない。

また花は花びらのみにして茎や枝は流さない。

たくさんのお花でお見送り

自然にかえらない物はゴミとなって環境を汚染してしまいます。
また献酒としてお酒や飲み物を撒くことがありますが、
これも必要以上に海に流すことは海を汚染してしまうことにつながります。

④周りへの配慮

乗下船場所での喪服の着用を控える。

一般的には海は葬儀をする場所ではありません。
楽しいレジャーで訪れている人もいますから喪服を着た人がいたら、
見た人は複雑な感情になってしまいます。

また喪服は体を締め付けるので、
船に乗った時に気分が悪くなってしまうこともあります。
船上になるので動きやすい楽な服装にする、
また革靴やハイヒールなど滑りやすい履物は避けるようにします。

以上のようなことを注意し、
心がけて海洋散骨を行うことが必要です。

従って個人で海洋散骨するのは難しく、
海洋散骨を希望する場合は専門の業者に依頼する方がいいでしょう。

散骨業者とのトラブルを避けるためには

最近では海洋散骨の認知度と共に専門業者も増え、
また海洋散骨の認知度の高まりとともに海洋散骨を行う方も増えてきました。

価格も以前に比べて良心的な価格になってきたのは喜ばしいことです。
半面、以下のような散骨業者とのトラブルも発生しています。

顧客の意向を無視して営業本位のみの業者、
無資格で営業する業者、
料金が不透明で後々追加料金を請求してくる業者、
遺骨の取り扱いが粗悪な業者など注意が必要です。

散骨業者を選択する場合は、
上記の点に注意して業者の話を直接よく聞いて、
安心できる業者を選ぶことが大切です。
散骨実績や知名度だけで判断しないほうがいいでしょう。

次回は海洋散骨のメリット、デメリットについて解説します。